国語 第2章
小説・物語
問題編
オリジナル短編の心情・情景読解
① 導入
小説は、行動・会話・情景を通して人物の心情を描く文章です。 「悲しい」「嬉しい」のような気持ちの言葉が本文になくても、行動や周りの景色から心情を読み取る練習をします。
物語を読んでいて「これ」「それ」が何を指すのか分からなくなることは、よくあります。困ったときは、その言葉の直前の文を指でなぞって確かめましょう。 段落が変わるところは、場面や話題が変わる目印です。この2つを確認してから、人物の気持ちを読み取る練習に進みます。
② 基本概念
- 心情:人物の気持ち。台詞・行動・表情・情景から推測する。
- 情景:場面の風景や様子の描写。心情と結びついて使われることが多い。
- 原因:心情が変化するきっかけとなった出来事。直前の一文だけでなく、それまでの流れも見る。
- 描写:様子を詳しく描いた表現。比喩(〜のようだ)にも注目する。
③ 図解
心情の読み方
出来事 → 行動・会話・表情 → 心情(推測)
↑
情景描写が心情を強めることもある④ 例題
【本文】卓球部の陸(りく)
明日は市の卓球大会だ。陸は自分の部屋で、ラケットを何度も握り直していた。 練習ではうまく打てても、大会になるとミスが増える。今年もまた、一回戦で負けるかもしれない。 窓の外はすっかり暗くなっていて、部屋の明かりだけが白く壁に映っていた。 陸はラケットを机に置き、小さくため息をついた。
陸の心情として最も適当なものを選べ。
「ラケットを何度も握り直していた」という行動から読み取れることを書け。
「部屋の明かりだけが白く壁に映っていた」という情景描写の効果として最も適当なものを選べ。
⑤ 基本問題
【小学校の復習】次の文章は、いくつの段落に分かれていますか。数字で答えなさい。
休み時間、教室はにぎやかだった。みんなはボール遊びの相談をしていた。
校庭に出ると、風が気持ちよかった。すぐにボールを追いかけて走り出した。
【小学校の復習】次の文の「これ」が指しているものを答えなさい。
たろうは新しいボールをもらった。これで公園に行きたいと思った。
【本文】続き
そのとき、スマートフォンが短く鳴った。同じ卓球部の奏太(そうた)からのメッセージだった。 「明日、一緒に頑張ろうな。お前のサーブ、最近すごくよくなってるよ」。 陸は画面を何度も読み返した。うまく打てないところばかり気にしていたが、 よくなっている部分もあったのだと、初めて気づいた気がした。 陸は返事を打ちながら、少しだけ口の端が上がっていた。
奏太のメッセージを読んだ陸の心情の変化として最も適当なものを選べ。
「少しだけ口の端が上がっていた」という表現から分かる陸の様子を書け。
陸が「初めて気づいた」内容を、本文の言葉を使って書け。
この場面は誰の視点で描かれているか。
奏太のメッセージが陸に与えた効果を、二十字程度で書け。
⑥ 標準問題
【本文】大会当日の朝
翌朝、陸が食卓に着くと、いつもより早く母が朝食を用意していた。 「今日は早いね」と陸が言うと、母は「そう? いつも通りよ」と笑って答えた。 本当は、母もいつもより早く起きて、卵焼きを焼き直していたことに、陸は気づいていなかった。 家を出るとき、母は「いつも通りでいいよ」と、ただそれだけを言った。 陸はうなずいて、玄関で靴を履いた。外の空気は、昨夜よりも少し澄んでいる気がした。
母が「そう? いつも通りよ」と答えた理由として最も適当なものを選べ。
「本当は…気づいていなかった」という一文から分かる、母と陸の気持ちのずれを説明せよ。
「いつも通りでいいよ」という母の言葉に込められた気持ちを書け。
「外の空気は、昨夜よりも少し澄んでいる気がした」という描写の効果として最も適当なものを選べ。
⑦ 応用・実力テスト形式
【本文】大会・準決勝
準決勝、陸は一点差で終盤を迎えていた。相手のサーブが鋭く入り、思わず体勢を崩す。 次の一本を落とせば負ける。手のひらに汗がにじみ、ラケットが少し重く感じられた。 そのとき、応援席から「いいぞ、陸!」という奏太の声が聞こえた。 昨日のメッセージの言葉が、頭の中でもう一度響いた気がした。 陸は小さく息を吐き、次のサーブに合わせて低い姿勢で構えた。 打ち返した球は、思っていたよりも真っすぐに、相手のコートの隅へ伸びていった。 審判の声が響き、陸はしばらく、自分が本当に点を取ったのか分からないまま立っていた。 それから、ゆっくりと拳を握った。負けるかもしれないと思っていた自分が、今この一点を取ったのだと、 少しずつ実感がわいてきた。
「手のひらに汗がにじみ、ラケットが少し重く感じられた」という描写から読み取れる陸の心情を書け。
奏太の声が陸に与えた影響を、本文に即して四十字程度で説明せよ。
「少しずつ実感がわいてきた」という結びの表現が持つ効果として最も適当なものを選べ。
この場面全体を通して、陸の心情はどのように変化したか。「不安」「奏太の声」「実感」の三つの語を用いて、 六十字程度で説明せよ。
次の(1)〜(3)に答えなさい。
(1) 本文中で、陸の緊張が最も高まっている一文を抜き出しなさい。
(2) この物語が「陸」の視点(陸の目や心の中)で描かれていることによって、読者にどのような効果があるか、 最も適当なものを選べ。
(3) この場面のタイトルを一つ考えるとしたら、どのような題が適当か。本文の内容(不安→奏太の声→実感)を根拠に、 理由も含めて40字程度で説明せよ。
⑦は定期テスト後半相当(複合・記述)。外部は物差しのみ。
【本文】部室での帰り際
準決勝を終えた夜、陸は部室に残って、一人でノートに今日の試合を書き留めていた。 「次はもっと落ち着いて打てるようにする」と書いたところで、ふと顔を上げると、奏太が扉から顔を出していた。 「まだいたんか」と奏太が笑うと、陸も笑って「ちょっとだけ」と答えた。二人は並んで、窓の外に沈んでいく夕日を眺めた。 陸は、今日の一点だけでなく、これからの練習のことも、以前より少し楽な気持ちで考えられるようになっていた。
この場面について、(1)〜(3)に答えなさい。
(1) 陸がノートに「次はもっと落ち着いて打てるようにする」と書いた行動から読み取れる心情として最も適当なものを選べ。
(2) 「窓の外に沈んでいく夕日を眺めた」という情景描写が、この場面でどのような効果を持つか、40字程度で説明せよ。
(3) 本文最後の一文「以前より少し楽な気持ちで考えられるようになっていた」と、この章の冒頭の場面における陸の心情を 比較し、陸がどのように変化したかを60字程度で説明せよ。
⑧ 確認テスト
【確認用本文】
試合の後、陸は奏太に「昨日のメッセージ、助けられた」と言った。 奏太は「え、そうなん?」と少し驚いた顔をしたあと、「じゃあ次も送るわ」と笑った。 陸も笑いながら、荷物をまとめて体育館を出た。外に出ると、夕方の風が汗ばんだ首筋を心地よく冷やしていった。 二人は自転車を並べて押しながら、今日の試合の展開を何度も振り返って話し続けた。
確認1:陸が奏太に伝えた気持ちとして最も適当なものを選べ。
確認2:「少し驚いた顔」から分かる奏太の様子を書け。
確認3:「じゃあ次も送るわ」という奏太の言葉に込められた気持ちを一言で書け。
確認4:この短編全体の主題に最も近いものを選べ。
確認5:陸の心情が最も大きく動いたきっかけを、本文中の出来事で一つ答えよ。
⑨ 完全解説
解説編で根拠となる行動・会話・情景を確認し、心情語だけで終わらせず、本文の描写と結びつけて説明する練習を繰り返しましょう。